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ベーシックインカムは何歳の人が対象になるのか?

新型コロナウイルスの感染者数が、現在アメリカに次いで2番目に多いスペインでは、コロナショックによる経済ダメージへの立て直しに向けて、政府はできる限り早くベーシックインカム制度を導入する事を決定しました。

スペインで「ベーシック・インカム」導入、経済大臣が宣言

今回のコロナショックのような危機が、抜本的な社会の仕組みを変える機会となるかもしれないと、世界的にベーシックインカム制度に注目が集まっています。

 

イノさん
これまで試験的にベーシックインカムを導入してきたところもあるようですが、実際には何歳の人が対象になるものなんですか?
現在ベーシックインカム制度の導入を議論しているスペインとアメリカの対象年齢について確認してみましょう。また、2018年12月まで試験的に導入していたフィンランドの事例についても見てみましょう。
バニ助

 



各国のベーシックインカム対象年齢は何歳?

【スペイン】まだ具体的にされていない

スペイン政府は、コロナショックによる経済的影響を乗り切るために恒久的なベーシックインカム制度の導入を検討し始めました。しかし、そのベーシックインカム制度は、まだ計画の初期段階のため具体的にどのようなものになるのか、何歳の人が対象になるのかは、現時点では公表されていません

ただ、スペインの経済担当大臣や社会保障大臣の言葉からは、計画されているベーシックインカム制度ではすべての世帯に無条件で現金を定期的に支払う普遍的なベーシックインカム』とは異なることが分かります。

各大臣の言葉は以下のような内容になります。

経済担当大臣であるナディア・カルビーニョ(Nadia Calviño)は日曜日(45日)の夜にスペインの放送局La Sextaに対し、(中略)ベーシックインカムを制定することは「主に家族を対象としていますが、それぞれの状況を区別します。」と語った。

社会保障大臣であるホセ・ルイス・エスクリバ(Jose Luis Escriva)はスペインの新聞社La Vanguardiaに、土曜日(4月4日)に発表されたインタビューで、この措置は「最も脆弱な人々のための恒久的なセーフティネット」と語った。

出典:https://www.businessinsider.com

 

【アメリカ】18歳以上のすべての国民

新型コロナウイルスの感染者数が、63万人と世界で一番多くなってしまったアメリカにおいても、ベーシックインカム制度への注目度が上がっています

アメリカでのベーシックインカムの推進には、民主党大統領選挙に立候補していたアンドリュー・ヤン(Andrew Yan)が、ベーシックインカム制度を立候補の要にしていました。このベーシックインカムの計画では、18歳以上のすべてのアメリカ国民に対して、月額1,000ドル(年額12,000ドル)の支払いが保証されるものです。

この計画について、政府内においても議論が始まっているようです。

緊急または長期のベーシックインカム制度について政府としては、3月上院議員のミット・ロムニー(Mitt Romney)が、財政的に困難なこの時期にアメリカの成人に対して、それぞれ1,000ドルを与えるよう政府に要求した翌日に、財務長官のスティーブン・ムニューシン(Steven Mnuchinによって最初に発表されました 

出典:https://www.businessinsider.com

 

【フィンランド】25歳から58歳の失業手当受給者(実験的導入)

ユハ・シピラ政府の政策の一つとして採用されたベーシックインカムの実験は、2017年1月に開始され、実験参加者には2年間にわたり毎月560ユーロ(6.7万円)のベーシックインカムが支払われました。

このベーシックインカムの対象者は、2016年11月に失業基本手当または労働市場助成金の支給を受けた175,000人のうち、25歳から58の年齢層から2,000人が選ばれています。

この実験は2018年の12月に終了し、その結果は段階的に発表されていますが、最終報告は2020年の春を予定してるとのことです。

 

ベーシックインカムとは?

イノさん
そもそも、ベーシックインカムってどんな制度なんですか?

 

ベーシックインカムとは本来、政府がすべての国民に対して定期的に一定額の現金を支給する制度のことです。年齢・性別・所得の有無は一切関係なく、すべての国民が対象になることが特徴と言えます。

世界的には、ユニバーサル・ベーシック・インカム(Universal Basic Income)、通称『UBI』または『BI』と言われており、「Universal=普遍的な」「Basic Income = 最低所得」という意味です。日本語では「最低所得保障」とも呼ばれています。

世界でも日本と同じように、年金・雇用保険・生活保護などの社会保障制度が存在していますが、それらは一定の条件や審査が必要となります。十分な資金が支給されなかったり、全く支給されない場合もあり、最低限の生活を送れない人も多くいます。

そういった貧困の格差に対して、ベーシックインカム制度には、所得の不平等を緩和しすべての人が最低限の生活を送れるようにするという目標があります。

すべての人が「平等に」という意図があり、社会主義的なイメージを持ちやすいかもしれません。しかし、個人の基本的な経済活動には国は関与せず、これまでの資本主義経済のもとに成り立つものと考えられています。

 

ベーシックインカムのメリットとは?

ベーシックインカムには、様々なメリットがあるといわれていますが、細かな部分ではその国の情勢などによって具体的な効果が分かれることが考えられます。ここでは、最も期待できるメリットを3ご紹介します。

メリット

  • 貧困対策、健康の改善
  • 労働環境の改善、意欲の向上
  • 行政コストの削減、社会保障制度の簡素化

貧困対策、健康の改善

貧困の増大は健康格差を生み、健康格差は貧困の再生産に繋がります。貧困と健康格差の問題は、個人の幸福な人生の問題に留まらず、社会全体の健康・経済発展にとっても大きな問題となっています

ベーシックインカムは、生活保護などの社会保障制度を受けられずに貧困となっている一人一人に対しても、確実に保証を届けることができるため、貧困層への対策・健康格差の是正が可能となり、社会全体の発展にも大きく寄与すると期待されています。

 

労働環境の改善、意欲の向上

ベーシックインカムで一定の収入が確保された中では、労働者は「待遇が悪くても働かなければいけない」という必要がなくなります

企業側は、ある程度の待遇を良くしなければ労働者を雇うことができなくなり、ブラック企業のように劣悪な労働環境の仕事がなくなっていくことが期待されています。

そして、一定の収入が確保されているため、時間を好きなことに使うということが可能となります。職業選択の幅も広がり、またはスキルアップのために勉強することもでき、個人の意欲向上が期待できます

 

行政コストの削減、社会保障制度の簡素化

ベーシックインカムは無条件で資金を支給するというシンプルな仕組みのため、この制度の導入は、これまでの社会保障制度の煩雑な手続きを整理することができます。

雇用保険・生活保護などの社会保障制度は、受給資格を得るために複雑な手続きをしなければならず、それらに対応していた職員の手間を簡素化することが可能となります。結果的に、行政の大幅なコスト削減が期待できます



ベーシックインカムのデメリットとは?

ベーシックインカムのデメリットについても様々あると言われていますが、ここでは最も重要だと思われる2点について触れておきます。

デメリット

  • 財源の確保
  • 既存の社会保障受給者を苦しめる

財源の確保

ベーシックインカムの最大の特徴は、無条件ですべての国民が一定の現金を受け取ることができる点です。その一方で、すべての国民に一定の金額を支給するためには、莫大な財源が必要になります

今ある社会保障制度を一本化して、その結果削減できたコストを財源に回すという案や、高額所得者や富裕層に対して増税するような税制改革をして、そこから財源を捻出するなどが考えられています。しかし、長期的なベーシックインカム制度の運用には、これらの策だけでは十分ではないことが懸念されています。

 

既存の社会保障受給者を苦しめる

ベーシックインカム制度は、既存の社会保障受給者にとってみると、今まで支給されていた保障額や支援が減ってしまうことが想定されています。

財源は大きく変わらないにも関わらず、受給対象者が増えるわけですから、経済的な弱者にとってみれば厳しい政策となってしまう可能性があります。

 

コロナショックはベーシックインカム制度を推進させる?

コロナショックは、今後も中長期的に世界経済にダメージを与えていくことが想定されています。コロナショックが長期化した場合、それによって多くの人々が職を失い、世界的に貧困人口が増加することが懸念されます。

そこでベーシックインカム制度に注目が集まっているわけです。

経済ダメージはリーマンショックを上回る

2008年のリーマンショックの時は、需要と供給の実体経済に変化がない中で、金融経済の崩壊が起き、世界的な経済不況に陥りました。その後、株価が回復傾向になるまでにおおよそ1年半掛かり、倒産する会社も多くありました。

しかし、消費者の基本的な消費行動は変わらず、買い物に行きますし、外食もします。旅行やイベントにも行き、それが世の中のお金を回す原動力になりました

しかし、今回のコロナショックでは需要と供給のバランスが急激に崩れ、実体経済から崩壊しています。消費者は外出できないため、お金を使わなくなりました。世界的に観光業、飲食業、イベント業などは大ダメージを直接受け、それらの業界を支えている二次産業、一次産業にも影響を与えてきてます。

コロナショックが長期化すると、リーマンショック以上に多くの会社が世界的に倒産に追い込まれる状況が考えられます。会社が倒産し雇用が維持できなくなった後、それらが回復していくのに何年かかるのか。さらに消費者の需要がコロナショック前と同じではないとすると、経済が回復していくまでにリーマンショック以上の期間が必要になると想定されます

 

新型コロナウイルスは一つの疫病にすぎない

2019年12月に中国湖北省武漢市で初めて確認された新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に世界に広がり、2020年4月15日現在では、全世界で200万人の感染者、死者13万人を超えました。2003年にも中国広東省を起点として流行したSARSとの大きな違いは、凄まじくグローバル化が進んでいたことが言えます。

今回の新型コロナウイルス感染症による被害がどれだけ大きくなるのか分かりませんが、コロナショック後の世界では世の中の価値観がガラッと変わると思われます。

いつ何時、人類は疫病と再び戦うことになるのか分かりません。疫病に対する免疫を社会の仕組みとして取り入れる必要があり、その一つのアイデアとしてベーシックインカム制度が推進され始めています

 

 

まとめ

実際にベーシックインカムを実験的に導入したフィンランドでは、25歳から58歳の失業基本手当の受給者の中で2000人を対象としており、すべての国民に対してという物ではありませんでした

一方、アメリカの中で推進されているベーシックインカム制度では、成人(18歳以上)のすべての国民が対象となっており、本来の意味でのベーシックインカムに近い考えが適用されるかもしれません。

ベーシックインカム制度の本格導入を検討しているスペインでは、今後どういった内容で制度が決まっていくのか気になることろですが、最低限の生活を送ることが難しい国民が優先的に対象となることは間違いありません。

ベーシックインカムの基本的な考え方は、無条件ですべての人に一定額の資金を支給するという物です。しかし、実際に世界で議論されているベーシックインカム制度は、条件付きの物が多くあります。その主要因は、やはり財源の問題だと思われます

では、これからの世界では、財源も含めてどのような仕組みが必要なのか、これから広く社会で議論されていくのではないかと思います。



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